41日め

2015年2月17日に生まれた長男の生後41日めからの記録

すりごまの研究

すりごまが大好きだ。とにかく封を切って開けたてのすりごまの香りが大好きだ。春のすりごまはマヨネーズとまぜて色よく茹でた野菜に添えるのが好きだし、夏のすりごまはポン酢と混ぜるのが好きだ。何にかけてもよい。秋のすりごまは根菜と食べるのが気分に合っている。冬のすりごまは豆乳スープに味噌と投入するのが好きだ。すりごまはおいしい。仕上げにかけると香りも見た目もよくなる。ごまミルも所持してはいるが、こちらには「すりごまをガバガバかけたい」というニーズが存在している。そんなわけで各社のすりごまをよく購入する。そうすると、一見同じに見えるすりごまにも種類や個性があることがわかったので紹介していきたい。


まず最初に知ってもらいたいのは、すりごまの中身だ。擂ったごま、それはそう。そうなのだが、それぞれに塩梅がある。まずはごまの形状である。

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完ごま。完全なるごまのこと。粒ごまとも呼ぶ。いりごまという商品名で手にすることができる。

我々はごまのどこを食べているのかというと、種子の部分である。栄養が含まれているが殻が硬くてそのまま食べても人体に摂取されにくいのはご存じの通り。ただ「ごま」と言われてイメージするごま粒のことを完全なるごまと呼んでいる。すりごまのごまらしさを担保するビジュアル担当。

 

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こわれごま。擂られているが、ごまとしてのアイデンティティも保っており、なおかつ香りも良い実力派。前述の通り完ごまでは摂取しづらいごまの栄養素を効率よく吸収できる形状といわれており、「すりごま」という商品として見た時も一番個性が出る部分ではないだろうか。すりごまの香りを対外的にアピールする技術面を担当しているといえる。

 

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粉ごま。細かく擂られたすりごまの最終形。香りは飛びやすいが縁の下の力持ち的存在で、食材とのなじみの良さを保証する。安価なすりごまには粉ごまが多い印象。均等にすりつぶされて粉状になったごまには一種の美学を感じる。

 


さて、以下はレビューである。2020年から空白期間を経て書き溜めたもののため、今とはパッケージの情報が変わっていたり、販売終了になった商品があるかもしれないことにご留意いただきたい。

公式オンラインショップにて取り扱いがあるものはそのリンク、ないものは購入したもののパッケージ写真表裏、2020年のメモのみ残っていて現在入手できなかったものはその旨を明記した。


やってみて気づいたのは、黒すりゴマそのものの違いが興味深く、かつそれぞれのパッケージに書いてある煽り文句も特徴があって面白いということだ。ごまそのものの甘みであったり、擂りのこだわり、使う器具、または焙煎をアピールする商品もある。すりごまとはごまさえあれば良いものではなく、ごまの産地や種類を選び、器具を選び、焙煎の方法を選び、いくつもの取捨選択を経て作り上げられたものなのである。

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ムソーはしっとり、かどやはこわれごま多め、和田萬はバランスがいい。

 

・オニザキのつきごま

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パッケージの表面に「杵つき製法「すりごま」」、裏面に「杵つき製法で丁寧に作った「すりごま」」「ゴマの粒をほどよく残しつつ、ゴマ本来の甘みを最大限に引き出しました。」と続く。

母親に「すりごまの中ではこれが一番おいしい」と言われて育ったのでこれが個人的なスタンダードである。体感としてスーパーでもよく見かけるので、すりごま商品の分布に地域性があるのか知りたかったが、調べ方がわからなかった。

すりごまとつきごまという言葉がパッケージに併記されている。その違いは公式サイトにて説明があった。

『すりごま』の多くは、油分の滲み出しが少なく、見た目にもパサついた感があり、『つきごま』と比べると風味や食感などで劣ります。 逆に『つきごま』はゴマの粒を杵でつくことで、ゴマの油分や旨み成分が適度に滲み出し風味や食感に優れています。

とのこと。

https://www.onizaki.co.jp/history/page5.php?srsltid=AfmBOoqGbQJonD4HEomJxI-seDQg4CwKRrG0QtMdkNAjrz0nQD7gEzNL

 


・和田萬 国産黒すりごま

https://gomayan.com/products/detail/538

表面:「日本の大地で育った黒ごまを濃く焙煎して丁寧にすりつぶしました」

裏面:「日本国内で栽培された黒ごまを10日以上、自然乾燥させて完熟させ、中心部まで火が入るように焙煎したあと、すりつぶさずに、うすと杵で叩いてつぶしました。どっしりとした香りが特徴です。ごまあえやおにぎりに、是非どうぞ!」

価格帯は高めだが珍しい国産ごま。黒すりごまは中身が白いので完ごま、こわれごま、粉ごまの割合によっては濃灰色に見えるものも多いがこれは粉ごまも多いのに見た目の黒が強い。それをアピールするためか包装も透明でかっこいい。

 


まんてんのすりごま

https://www.manten-shop.com/products/detail/81

表面:「ほうろく仕立てでじっくり煎りあげ、杵つき製法でふっくらと仕上げました。香味豊かな自信作です。」

ほうろくは煎茶を煎る際などに利用される台所用品とのこと。昔ながら、ということなのだろうか。伝統がありそうな印象が持てる。

モンドセレクション10年連続金賞以上受賞しているらしい。5割くらい完ごまで、ぷちぷちとした食感が楽しめる。香りは控えめ。

裏に「1日に大さじ2杯を目安にお召し上がりください」と書いてあった。こういう注意書きをしないと食べ過ぎる人がいるのだろうか。どこかにいるすりごま好きの仲間にそっと想いを馳せる。


・ごまマコト  しっとり香味すりごま 黒

https://goma-makoto.com/consumer/wetsesamebkack60g/

表面:「釜煎製法にて風味豊かに焙煎し、しっとりしたすりごまに仕上げました。」

裏面:「厳選した香味の良いごまを丁寧にすりあげました。ごまあえ等のお料理にお使いいただきますと、ごま本来の香ばしさと自然の甘さが、お料理の味を一段と引き立てます。」

こちらはほうろくではなく釜。ていねいにすりあげた、の言葉の通り粉ごまが多くサラサラしていてダマがない。しっとり/サラサラがすりごまの商品としての個性になることを教えてくれた一品。


・オーサワの有機すりごま

https://new.ohsawa-japan.co.jp/?actmode=ItemDetail&iid=66

表面:「粒をほどよく残した粗挽き製法

香ばしく豊かな香り」

裏面:商品説明の文章は特になし

こわれごまを推しているところが魅力的。やはり粒を残すことでごまらしさ、食べ応え、また口内でさらにすり潰すことによる香り立ちを狙っているのではないだろうか。


・ムソー しっとり有機すりごま

https://muso.co.jp/item/20788.html

表面:「杵つき製法で、ごまがしっとりするまですりつぶしました。ほんのり甘い胡麻の風味をお楽しみください。」

裏面:「有機栽培のごまを香ばしく焙煎し、杵つき製法でごまの旨味(油分)がでるまで丹念にすりつぶしました。ごまの油分でしっとりさせたすりごまです。ほんのり甘いごまの風味をお楽しみいただけます。」

おいしいがダマが多め。ドバッと出るので注意が必要。ほぼ粉ごまながら、しっとりしていてダマダマだから食べ応えがある。ごまの甘みを推しているのは珍しい。2020年にパッケージに書かれた言葉は「杵つき製法で丹念に仕上げた、しっとりした食感のすりごまです。」だったとメモに残っていた。


・和一郎の本鉢すりごま

(リンクなし)

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表面:「煎りたてのごまをていねいに鉢ですりあげた風味抜群の商品です。」

裏面:「本品は弊社にて煎り胡麻機械を開発し、従来品より胡麻を深煎りし、磁器鉢にて丁寧に手すり感覚で時間をかけてすり上げた商品です。「電子チャージ→再洗い→乾燥→焙煎→突き→すり」と丁寧に仕上げました。」 どうぞ和一郎の"すり胡麻"をお試しください。」

これはすごかった。6割ちかく完ごまで、多いなと思ったらこれが口の中で噛んだときに弾けるように香る。口の中がすり鉢になったみたい。

2020年のメモによると「今回すりごまの製法を改良したらしい。今までは洗いごまを「電子チャージ→焙煎→突き→すり」の工程だったのが、「電子チャージ→再洗い→乾燥→焙煎→突き→すり」にしたらしい。」2025年に入手して確かめた際には今までの工程の記述は明記されていないため、パッケージ変更があったのかもしれない。


・かどやからしっとりすり鉢仕立て風黒すりごま

(写真なし・現在は販売終了?)

しっとりしてるからダマになっている。ごま油も混ざっているのだろうか?不思議と胡麻せんべいの香りがする。完ごま、こわれごまは少なくて、ほとんど粉ごま。

「すり鉢ですったようなしっとり感。味わい香る粒の食感。伝統的なすり鉢で仕立てたようなすりごまを再現。香ばしく、味わいの良い、しっとり感とごま粒の食感が特長です。幅広くご利用いただけます。」という文章から、すり鉢ですったごまをすりごまヒエラルキーの上位として設定していることがわかる。


・三育フーズ  三育特産すりごま

(リンクなし・現在は販売終了?)

「ごまは、良質のタンパク質をはじめ、カルシウムや鉄、ビタミンE及び抗酸化作用のあるセサミンなどを豊富に含む、健康な食生活には欠かせない日本古来の食材です。三育のすりごまは、ごま本来の持つ旨味と風味をひきだすため、独自の製法により、いろいろな粒度のごまを適度に含む様に製造しております。」

鳥の餌のような形状で、カラカラの完粒ごまが多い。香りは少ないけど粒ごまが多いから食べ応えがある。サラサラしているから和え物によさそう。

 

 

レビューをご覧いただき、一口にすりごまといってもそれなりに個性があることがおわかりいただけただろうか。しかしどの商品に通底してかかえている問題が、香りの経年変化である。香りが逃げにくいようにアルミパッケージを採用したり、みぞにごまが挟まって密閉性を損なわないよう注意書きを付記したりと各社の工夫がみえる。どの商品も、袋からからザバザバすりごまをふりかける際に乾燥剤が一緒に転がり落ちてくる。密閉できるびんに詰め替えてスプーンなどで利用する想定なのだろうか。これからもすりごまウォッチを続け、もしかしたらあるかもしれないすりごま包装の大革命をその目で見たい。